観劇鑑賞ADME録

色んな作品を咀嚼するブログ。ネタバレしかないです。

【映画感想】犬王

鑑賞日:2022.7.10(日)
2022年の作品。

思い立って観ました!!!
これマジで観て良かったマジで マジで マジで
歌詞付き上演ってやつだったけど、字幕みたいに歌詞が表示される感じですごい助かった。聴覚情報だけじゃ限界ある人なので……

あらすじ

時は室町、足利義満の治世。
壇ノ浦に沈んだ三種の神器が一つの宝剣に呪われ失明、色々あって琵琶法師となった友魚(ともな:のち友一⇒友有)。
何らかの呪いにより途轍もない異形で生まれ落ち、猿楽の才能がありながら犬同然に扱われている犬王。
2人の少年が出会い、犬王の周囲に漂う亡霊……語るべき手段を持たない、無数の平家の亡霊の存在に気づいた時。未だ語られない2人は「友有座」を立ち上げ、『平家の物語』を全く新しい形で歌い上げ踊り上げることに。
その度に犬王の異形の呪いは解けていき、同時に2人の語る『物語』に人々は熱狂していく!
その熱狂の先にあるものは?呪いが解ける、その先には一体どんな物語が??

全体的な感想

とにかく超〜〜〜〜〜〜〜!!!良かった!!!!!!
なんだろ、もちろんストーリーもキャラクターもメッセージ性も歌も踊りも何もかも良かったんだけど、とにかくアニメーションがすんごいレベル高かった!!!
ジブリの『かぐや姫の物語』観た時と同じ感情 
これがアニメーションの底力……
特に友魚が琵琶法師達に出会うまでの、視力が無いながら放浪する描写とか凄すぎて……名札のシーンとかさ!アニメーションって凄い あれぞ技術ですよ

友有と犬王の語る平家物語

前情報で知ってたけどマジでロックフェスすぎて最高でしたね!!!!!あそこまで突き抜けてくれると本当逆に何も気にならなくなって楽しい……いやでも木造の橋の上で炎の曲芸やってんのはドキドキしたな 燃えるやろ
Queenのライブってあんな感じだったんだろうか……そら民衆熱狂するよね オートミールしか食べた事ない人にラーメンとハンバーガー与えるようなもんじゃん(?)
友有のいた琵琶法師達のみんなが犬王の悪口言ってるシーン、「あれは琵琶じゃないだろ!!」は悪くっていうか普通にその通り過ぎて笑ってしまった。あれは琵琶ではないです。でも一番偉い?おじいさんはおおらかに犬王を受け入れててほっこりした。こういう人がトップに立ってると良いよね……

『存在しない者達』の物語

呪いの解けた、その後の世界
定本以外の平家の物語を語る事を禁じられた犬王と友有。
友有を人質に取られた形の犬王はそれを受け入れてその後も義満に重宝され、一方拒みきった友有は河原で斬首。
あんなにハッピーな上覧演舞からここまで落とすかよ。
友有の父がそうであったようにこの映画の世界観では『亡霊』というものが存在して、けれどある程度時が経てば怨念も鎮まり亡霊も消えていくんですよね。そんな中で室町から令和までこの世を睨み続けた友有の怨念の強さたるや!!!!!

脚本家、野木亜紀子先生の『MIU404』もそうだったけど、徹底して存在されないことにされた者達の物語だったなあと思いました。
存在しないことにされた定本以外の物語を持つ平家
異形のため人間ではなく犬として扱われた犬王
この二つの存在を歌い上げた友有も結局は亡き者にされ、
生きながらえた犬王も名前以外は何一つ残らなかった
(歌いたい題材を取り上げられてるんだから、そりゃあ何も残せないだろう)
あ、宝剣の犠牲になった友魚の父や、それを嘆く母もある意味では『存在しないとされた者』かもしれないね 明らかに身分低そうだったし。史実では宝剣はその後見つからず別のものを三種の神器に組み込んだらしいです。

『亡霊たちは自らの物語を聞いてもらいたがっている』

これは平家の亡霊に囲まれ育った犬王の台詞ですね。
メタい話だけどこれを友魚・犬王に拡大した時、鑑賞者である私たちが『犬王』という2人の物語を知ったことで満足した、ってこじつけることも出来ちゃうな〜と思いました。これは考察ではなくこじつけです。

まとめ

もう一回観たいな……ってタイプの映画です
一回総浚いしてから、あの怒涛の始まりを見てみたい!!!!!
パンフレット完売も納得ですね パンフ欲しいタイプの映画
パンフ欲しい……(買えなかった人)(見るのが遅い)

何も考えなくても観ていて楽しい、けれど最後まで見ると何かを考えざるを得ない、そんな映画でした



どうでも良いけど犬王のご尊顔、人間に戻った後も画面には映らない演出とかが良かったな〜(ただのワガママ)